棒渦巻銀河・UGC 11861は、地球から6900万光年離れたケフェウス座に位置し、壮大な2本の螺旋腕とその中央に広がる輝く星々が印象的です。これまでに3つの超新星が観測されたこの銀河は、星形成が活発であり、宇宙膨張の謎を解き明かす重要な手がかりを提供しています。ハッブル望遠鏡による新たな観測は、宇宙の歴史をさらに鮮明に描き出すことでしょう。
銀河「UGC 11861」
NASAが、2024年8月19日に、ハッブル望遠鏡の「今週の1枚(Picture of the Week)」として新たな観測写真を公開しました。
観測されたのは、北の空のケフェウス座にあり、地球から6900万光年離れた場所に位置する棒渦巻銀河「UGC 11861」です。
写真で分かるように、この銀河には広い2つの螺旋腕が伸びており、白く輝く中央領域を包み込んでいます。
この中央領域ではガスや塵の中で活発な星形成が行われているようで、外側にある螺旋腕には、輝く青い星々がたくさん見られます。
超新星が頻繁に燃え上がるという点で注目され、研究対象となっている銀河UGC 11861。
1995年、1997年、2011年に3つの超新星爆発が発見されました。
そのうちの2つは両方ともII型超新星で、大質量星が寿命を終え爆発した時にできたものでした。
この写真は、ハッブルのAdvanced Camera for Surveys(ACS)によって、II型超新星とその環境を研究するために収集されたデータから作られたものです。
「ハッブルはこの銀河の雄大さの観測にとても適している。」と天文学者は述べており、今後もハッブル望遠鏡の観測に大きな期待を抱いているようです。
超新星で探る宇宙膨張の歴史
宇宙が誕生した138億年前から現在に至るまで宇宙空間は膨張し続けています。
その膨張率は、宇宙に存在する物質や暗黒物質による重力と、未知の作用である暗黒エネルギーによって時間の経過と共に変化しているのです。
宇宙の大きさや膨張率を正確に知るには、遠方にある超新星などの天体が放ち、宇宙膨張によって本来より伸びた波長の量(赤方偏移)を測定することが必要となります。
そこでハッブルが遠方の超新星の明るい光を捉えることで、遠い宇宙の距離を測定したり、宇宙の膨張速度を計算することに大いに役立ちます。
重要なパラメーターである宇宙の膨張率を表す数値は「ハッブル定数」と呼ばれるように、現在の宇宙論において、ハッブルでの超新星観測は欠かせません。
今後もさらに遠方の超新星を多数観測し、宇宙膨張の歴史をより精密に描き出し続けることが必要になるでしょう。
研究チームは、今後もハッブルや他の観測装置で解析データを増やして研究を続けることを計画しており、ハッブルは注目を浴び続けているのです。