梅雨が楽しくなる宇宙話 ~鉄、岩石、ガラスが降る惑星~

みなさんは雨が好きですか?外出の機会が減り、家で過ごす時間が退屈に感じる人も多いかもしれません。宇宙に目を向けてみると、地球とはまったく違った「雨」が降っているのをご存知ですか?実は鉄やガラス、岩石などが降り注ぐ、まるでSF映画のような惑星があります。今回は、私たちの想像を超える「雨」が降る惑星を紹介します。

岩石や鉄の雨が降る惑星

私たちの住む地球は、水の惑星とよばれるほど水が豊富で、海や川を形成しています。
これらの水が太陽エネルギーによって蒸発して雲になり、やがて雨や雪となって地上に降り、それが集まって川となり海に流れます。
このサイクルは水循環と呼ばれていますが、水の代わりに岩石や鉄が循環している可能性のある惑星が見つかっています

岩石の雨が降る K2-141b

K2-141bと地球の比較
https://science.nasa.gov/exoplanet-catalog/k2-141-b/

地球から200光年ほど離れたK2-141bという惑星があります。
この惑星は、大きさが地球の1.5倍ほどの大きさがある岩石でできた惑星です。主星にとても近いため、惑星は常に同じ面を主星に向けており、主星からの熱によって昼の気温はなんと3000度にもなります。
この温度は岩石が蒸発してしまうほど熱いため、この惑星は岩石の雲に覆われていると考えられています。

反対に、夜の気温はマイナス200度。この気温差によって、惑星の昼側から夜側に向けて秒速5kmという猛烈な風が吹いており、岩石の雲が寒い夜側に向かって流されているのです。ちなみに、地球上での強い台風でも秒速50mくらいなので、どれだけ強い風か想像するのも難しいですね。

流された岩石の蒸気は、温度が下がると冷えて固まり雨のように降り注ぎ、降った岩石は海を作っていると考えられています。
まさに地球の水と同じような循環が、K2-141bでは岩石で起こっているのです。

鉄の雨が降る WASP-76b

640光年先にあるWASP-76bという惑星も、K2-141bと同じような環境の惑星です。
昼の温度は2400度以上もあり、この惑星でも昼側から夜側に向けて猛烈な風が吹き、大気が流されていると考えられています。
なんとこの惑星の大気中にはが含まれていることが、超大型望遠鏡(Very Large Telescope)によってわかっています。

つまり、K2-141bと同じように、この惑星の夜には冷えた鉄の雨が降り、鉄の川流れている可能性があるのです。
鉄砲の弾より速い風に流された鉄の雨…地球の雨がとても優しく思えてきますね。

WASP-76bで降る鉄の雨の想像図
Credit: ESO/M. Kornmesser

ガラスの雨が降る HD 189733b

HD 189733bの想像図
ESO/M. Kornmesser

65光年ほど離れたこの惑星は、人類が初めて色を特定した惑星です。
この惑星の大気に含まれるケイ酸塩が青い光を散乱するため、惑星全体が非常にきれいな深い青色をしています。

HD 189733bも主星に非常に近く、「1年」がわずか2.2日。主星からの熱で表面温度は1500度ほどに達します。
この星でも昼側から夜側に向けて猛烈な風が吹いており、その速さは最大2km/s。
大気中に含まれるケイ酸塩はガラスの主成分であることから、溶けたガラスの雨が降っていると表現されます。

水の雨が降る K2-18b

宇宙には鉄や岩石のような恐ろしい「雨」しか降らないのでしょうか…
そんなことはありません。地球と同じく水の雨が降っているかもしれない惑星も見つかっています。

124光年離れたK2-18bの想像図
地球の8.6倍の質量を持つが、ハビタブルゾーン内の惑星で初めて水が発見された
Credit: NASA, ESA, CSA, Joseph Olmsted (STScI)

その惑星は、124光年離れた場所にあるK2-18b。
海王星と同じくらいの大きさを持ち、ハビタブルゾーン(液体の水が存在するのに適した温度を保てる領域)を公転している惑星です。

ハッブル宇宙望遠鏡の観測によって、この惑星の大気に水が含まれていることがわかっています。
さらに、惑星の気候シミュレーションによって、大気中の水が液体になり雨として降っている可能性もあることがわかったとか。
K2-18bには地面がなく、雨が落下していく途中で蒸発し、また雲に戻っていく循環が起こっている可能性があるようです。

太陽系内の惑星の雨

ここまでは、100光年以上離れた惑星ばかりを紹介してきました。しかし雨が降る惑星は、遠くの特殊な惑星だけではありません。

金星に降る硫酸の雨

The northern hemisphere is displayed in this global view of the surface of Venus as seen by NASA Magellan spacecraft.

地球の姉妹星と呼ばれる金星でも雨が降っていると言われています。
金星の大気はほとんどが二酸化炭素ですが、高度45kmから70kmに硫酸の雲が存在し、そこから硫酸の雨が降っています。

ですが、この雨も地球の雨のイメージとは少し違います。
金星の気温は、二酸化炭素の温室効果により非常に高く460度ほどになります。そのため、硫酸の雨は地上に届く前に蒸発してしまい、地上に届くことはありません。

ですので、金星へ送った探査機が溶けてなくなってしまうこともないですし、もしみなさんが金星に住むことになっても屋根が硫酸で溶けてしまうという心配は不要です。

海王星で降るダイヤモンドの雨

This picture of Neptune was produced from the last whole planet images taken through the green and orange filters on NASA's Voyager 2 narrow angle camera. The images were taken at a range of 4.4 million miles from the planet, 4 days and 20 hours before closest approach. The picture shows the Great Dark Spot and its companion bright smudge; on the west limb the fast moving bright feature called Scooter and the little dark spot are visible. These clouds were seen to persist for as long as Voyager's cameras could resolve them. North of these, a bright cloud band similar to the south polar streak may be seen.

太陽系で一番外側を公転する美しい青が特徴的な海王星。
この惑星で降る雨のことを知ると、もっと海王星が好きになるかもしれません。

海王星が青いのは、青色以外の光を吸収するメタンが大気に多く含まれているためです。そして大気の圧力は地球の10万倍もあります。
これほどの高圧下では、メタンは炭素と水素に分解されてしまいます。そして、炭素はダイヤモンドの結晶になると考えられています。
大気中ではダイヤモンドは降下するため、ダイヤモンドの雨が降ると表現されることがあります。

このダイヤモンドが降下することによって生まれる熱が、海王星の熱源になっている可能性もあり、興味深く研究されているようです。

海王星のダイヤモンドを集めてお金持ちにれるかも!と思いましたか?
ちなみに唯一海王星を訪れたボイジャー2号は、海王星まで12年かかっています。長旅に耐える覚悟が必要かも。

さいごに

ここまで色々な惑星の雨の話をしてきましたが、みなさんが想像する地球の雨とは全く違う姿をしていたのではないでしょうか。
地球の常識にとらわれず、柔軟な発想を持つことの大切さを教えてくれているのかもしれません。

梅雨の時期は星空を楽しめる日が少なくなりますが、地球の雨を感じながら、遠い惑星で起きている不思議な現象に思いを馳せてみるのはどうでしょうか。


本記事はYouTube科学番組「らぶラボきゅ〜」とのコラボ記事です。

動画ではこちらの内容が、お子様向けの動画としてわかりやすく楽しく紹介されています。
ぜひ動画もお楽しみください。


参考資料

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