ドイツには約3600年前に作られた「ネブラディスク」という不思議な円盤が存在します。これは現存最古の天文盤と言われており、青銅器時代から人々が天体を観測していた重要な証拠となっています。
2024年5月、ガリレオライターの松井が本物のネブラディスクの見学とその出土地へ取材へ行って参りました!本記事では、現地の様子をお届けします。
博物館で出会う3600年前の天体観測装置
ネブラディスクは現在、ドイツのハレ(ザーレ)という都市にあります、ザクセン=アンハルト州立先史博物館に展示されています。

こちらの博物館は公共交通機関で訪問しやすい場所にあり、この日もたくさんの見学者で賑わっていました。
神秘的な雰囲気漂う展示室で本物と対面
最上階である3階の、1番奥まで進むと…何やら真っ暗な部屋があります。

恐る恐るその部屋の奥へと足を踏み入れると…特徴的な青緑色のネブラディスクがついに目の前に現れます。

約3600年前に作られたその円盤は、なんだかおぞましい雰囲気を醸し出していました。
壁の後ろ側に回ると、裏面も見えるようになっていました。

後ろ側には、特に何も貼られていないのですね。
ネブラディスクは、ドイツのネブラという小さな町の近くにあるミッテルベルクという丘の上で発見されました。
現在はハレのまちなかにある博物館で保管されていますが、実際はもっと田舎で発見されたというわけですね。
この出土地の近くには 「Arche Nebra(アーク・ネブラ)」 というビジターセンターがあり、ネブラディスクに関する情報を深く知ることができます。

ネブラの箱舟 – 遺跡を守るビジターセンター
Arche Nebraとはドイツ語でネブラの箱舟を意味します。
ネブラディスクの下方に位置するアーチは船を描いたものだと言われており、それが施設名とこの形状の由来となったのでしょう。
Arche Nebraには、ネブラディスクの全てを解説する展示室はもちろん、オリジナル番組を投影するプラネタリウムもありました。
そんな中、私が最も感激した展示はこちらです。

実物大レプリカで体感する古代の技術
直径およそ32cm、重さ約2kgのネブラディスクを「体感」できる
これはネブラディスクを模した銅板です。裏面は針金でつながっていますが、ある程度自由に持ち上げることができるようになっています。
本物を「見る」だけでは分からなかったずっしりとした重さや、薄い円盤ではあるものの見た時の印象よりも案外厚みがあることを体感することができました。なかなか壊れることはなさそうです。
実はネブラディスクの満月(太陽?)側にある抉れた跡は、盗掘の際にできたものだと言われています。
欲望のままに、非常に強い力を掛けられてしまったことが容易に想像できました。

いざ出土地へ!天空の目と呼ばれる聖地
実際の発掘地は、Arche Nebraから徒歩でゆるやかな坂道を約40分行った場所にあります。

ネブラディスクの出土地はこちら。

現在はその場所にステンレスの大きな円盤が埋め込まれ、「天空の目 (Himmelsauge)」と呼び親しまれています。
周囲は柵で囲まれていて、なんだかミステリーサークルのようでした(笑)
ネブラディスクのミステリアスな雰囲気にぴったりですね。

さらに出土地の近くには 「ネブラディスク展望台」 が設置されており、ここからは周囲の風景を一望できるようになっています。
100段を超える階段を登り(!)、展望台から空を見上げると視界がとても広く
この場所が天体観測に使われていた可能性を肌で感じることができました。

実際にネブラディスクとその発見地を訪れることで、単なる考古学的な遺物ではなく、青銅器時代の人々がどのように宇宙を捉えていたのかをなんとなく感じることができたように思います。
ネブラディスクは星々の模様だけでなく、後から追加されたアーチ状の装飾も確認されており時代による用途の変化が推測されています。
これが青銅器時代の人々が持っていた宇宙観の表れなのか?
誰がどんな用途で作り、どのようにして、いつまで使用されていたのか?
…研究者たちは現在も議論を続けています。
古代の天文学のロマンとも言える!?
ふしぎな天文盤「ネブラディスク」のお話でした。
参考文献
- ザクセン=アンハルト州立先史博物館 公式サイト(ドイツ語)
https://www.landesmuseum-vorgeschichte.de/ - 観光案内所アークネブラ 公式サイト(ドイツ語)
http://www.himmelsscheibe-erleben.de/
この記事に使用している写真は全て、ライターの松井が撮影しています。