ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた美しいリング!ロマンチックな銀河

新たに公開されたハッブル宇宙望遠鏡の観測写真は、地球から3億2000万光年離れたペルセウス座に位置する棒渦巻銀河「MCG+07-07-072」です。その美しいリング状の形状は、銀河同士の衝突や重力レンズ効果によるものと考えられ、宇宙の進化と多様性を探る手がかりとなるでしょう。NASAの最新の発表は、銀河の形成と進化に関する研究に新たな光を当て、私たちに広大な宇宙の奥深さを再認識させてくれます。

銀河「MCG+07-07-072」

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された美しいリング状の構造を持つ銀河Abell 426

NASAが、2024年8月12日に、ハッブル望遠鏡の「今週の1枚(Picture of the Week)」として新たな観測写真を公開しました。観測されたのは、地球から3億2000万光年離れたペルセウス座にある棒渦巻銀河の「MCG+07-07-072」。別名「エイベル426(Abell 426)」を構成する銀河の1つです。

MCG+07-07-072は、渦巻腕が棒状構造の両端から伸び、まるで指輪のように見えるのが特徴の棒渦巻銀河です。
中心部が棒状にのびている棒渦巻銀河は、渦巻銀河全体の約3分の2を占めるほど一般的な形です。
私たちが住む天の川銀河も、星が高密度に集まった円盤構造が渦を巻いているように見える構造を持ち、棒渦巻銀河に分類されます。
しかし、MCG+07-07-072は単なる棒渦巻銀河ではなく、非常に珍しい形状をしています。

この形状が作られる理由としてまず考えられるのは、銀河同士の衝突です。

銀河の衝突自体はそんなに珍しいことではありません。
2つの銀河がお互いの重力によって銀河同士が接近し、衝星間ガスや星間雲どうしが激しく衝突し、圧縮します。
その際に大量の星を生み出し、その形状と内部の性質を大きく変えるのです。
そのため、銀河の進化を探る上で、衝突銀河は重要な鍵を持っていると考えられています。

また、銀河の形を変える方法の1つとして、宇宙で作用する「重力レンズ効果」と呼ばれる現象も考慮しなければなりません。

重力レンズ効果とは、私達から見て銀河団の向こう側にある天体からやってくる光が、暗黒物質の重力によって、レンズを通過した時のように曲げられる現象を指します。

銀河団には暗黒物質がたくさんあるため、非常に 顕著な重力レンズ効果を発揮します。
MCG+07-07-072のような銀河は、背景のより遠い所にある銀河の光が、重力レンズ効果で弓状になり、アインシュタインリングと呼ばれるような、リングの形状にみえるのです。

銀河の多様性から宇宙を探る

銀河にはさまざまな形や構造があり、ハッブルの分類により、銀河は「楕円」や「渦巻」、リングやレンズ状を含む「不規則」というような主要なタイプに分けられます。

例えば楕円銀河は、主にガスや塵の少ない古い星が含まれているため、新しい星を形成することになるとかなり不活発です。
一方の渦巻銀河は、通常はガス、塵、活発な星形成が詰まっています。

このように一口に銀河と言っても形状によってかなり内部の性質に違いがあります。

このように銀河は、形状が単に珍しいものから、天体物理学的に重要なものまであります。
珍しい銀河を分類し、違いを理解することは、銀河の形成と進化に関する貴重な洞察をするのに役立つので、天体物理学研究においてとても重要です。

リング状のMCG+07-07-072は、視覚的な美しさに魅せられるというだけでなく、宇宙の銀河を形作る複雑な力と多様性を再認識させてくれました。
MCG+07-07-072の観測は、様々な銀河の中心に存在するであろう超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)の起源に関するヒントを得ることに貢献します。

今後もハッブル望遠鏡などの最先端の望遠鏡を駆使して、銀河、巨大ブラックホール、暗黒物質の進化など、宇宙の大規模構造と進化の研究が展開していくでしょう。

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