NASAが2024年8月26日に公開したハッブル宇宙望遠鏡の「今週の1枚」は、この銀河の壮大な姿を捉えた一枚。セイファート銀河として知られるUGC 3478は、明るい活動銀河核(AGN)を持ち、私たちにブラックホールの謎を解き明かすための新たな視点を提供します。高エネルギーのX線が織り成すこの美しい光景は、宇宙の深遠さを感じさせるとともに、天文学の進化を支える重要な手がかりとなるでしょう。
セイファート銀河「UGC 3478」
NASAが、2024年8月26日に、ハッブル望遠鏡の「今週の1枚(Picture of the Week)」として新たな観測写真を公開しました。
観測されたのは、地球から約1億2800万光年離れたきりん座にあり、 2つの光る螺旋腕を持つ渦巻銀河である「UGC 3478」です。
UGC 3478は、「セイファート銀河(Seyfert galaxy)」と呼ばれるタイプの銀河です。
観測写真をみると、長い螺旋腕とたくさんの星とガス雲で満たされた銀河の中心に輝く点があります。
ここには成長中の巨大なブラックホールと考えられており、「活動銀河核(AGN)」と呼ばれています。
AGNは時に非常に明るく、周囲の銀河の他のすべての星を凌駕します。
AGNは、銀河中心のわずか太陽系程度の領域から、太陽が放出するエネルギーの百億倍から百兆倍ものエネルギーを放出しています。
中心部にこのようなAGNを持ち、異常に明るい渦巻銀河はセイファート銀河と呼ばれます。
1943年にこの銀河の分類をした、アメリカの天文学者カール・キーナン・セイファートにちなんで命名されました。
UGC 3478のような活発に活動する銀河は、中心にある核が非常に明るく光っているおかげで、遠く離れた地球からも観測できます。
活動銀河核(AGN)の研究
今回の銀河内で観測されたAGN。
AGNのサイズは小さく、わずかに太陽系ほどであるにも関わらず噴出されるジェットの光度は銀河全体に匹敵します。
AGNの最も魅力的な謎は、どのようにしてこの膨大なエネルギーを非常に小さな領域から放出しているのか。
その正体はいったい何なのか。
これらの特徴を説明する最も有力な天体として、太陽の1億倍もの質量を持つ大質量ブラックホールが挙げられます。
膨大なエネルギーは、核の中心にあるとされる大質量ブラックホールに周囲の物質が落ち込んで、円盤を作り、重力エネルギーが解放されることで生まれると考えられています。
AGNは大質量ブラックホールの周りにできた円盤状のガス(降着円盤)と高温電子の領域で構成され、ブラックホールから遠い場所では降着円盤が可視光のようなエネルギーの低い光を、近い場所では高温電子がエネルギーの高いX線を放射しています。
UGC 3478でも、ガスの円盤がブラックホールに螺旋状に入り、衝突して加熱され、非常に強いX線放射を放出していると考えられ、限られた小さい中央領域だけにもかかわらず、強い明るさを放つので、私たちはその周りの銀河の円盤をもはっきりと見ることができるのです。
AGNの研究は、超巨大ブラックホールの成長や、銀河への影響、相互作用などについて理解を深め、宇宙論的進化の解明に役立っています。
今後もハッブル宇宙望遠鏡が、X線望遠鏡による研究と共に、様々な天体の理解を深め、宇宙科学をさらに発展させられることが期待されています。
参考記事:
https://esahubble.org/images/potw2435a
巨大ブラックホールが支配する「AGNエンジン」の解明へ – 理化学研究所
https://www.riken.jp/press/2014/20140918_1/index.html