きらめく星々の宝石箱 – 矮小不規則銀河UGC 8091の神秘

NASA/ESAのハッブル宇宙望遠鏡が、地球から約700万光年離れたおとめ座に位置する矮小不規則銀河「UGC 8091」の新しい観測画像を公開しました。この銀河は、まるでホリデーシーズンを彩る雪の結晶球のように、無数の星々がきらめく幻想的な姿を見せています。

独特な形状を持つ矮小銀河

矮小不規則銀河 UGC 8091
ESA/Hubble, NASA Y. Choi (NOIRLab), K. Gilbert (Space Telescope Science Institute), J. Dalcanton (Flatiron Institute and University of Washington)

UGC 8091(別名:GR 8)は、通常の銀河のように整然とした形状を持たない「不規則銀河」に分類されます。
その姿は、まるでクリスマスツリーに飾られた光の束のように、星々が不規則に散りばめられているのが特徴です。

このような不規則な形状は、銀河内部の激しい活動や、近隣の銀河との相互作用によって形成されたと考えられています。
特にUGC 8091は「矮小不規則銀河」と呼ばれ、含まれる星の数はおよそ10億個程度です。
これは一見膨大な数に思えますが、私たちの天の川銀河が1000億個以上の星を持つことを考えると、比較的小規模な銀河であることがわかります。

宇宙進化の手がかりを秘めた観測データ

今回の観測では、ハッブル宇宙望遠鏡の2つの主力観測機器「広視野カメラ3」と「高性能観測カメラ」を使用し、2006年から2021年までの長期にわたるデータを集積しました。
12種類のフィルターを組み合わせることで、紫外線から可視光の赤色域まで、幅広い波長の光を捉えることに成功しています。

画像中に見られる赤い領域は、最近の星形成活動で生まれた高温の恒星からの輻射によって励起された水素分子が放つ光を示しています。
その他のきらめきは、より年老いた恒星たちからの光です。

初期宇宙の理解につながる研究

この観測プログラムの主要な目的の一つは、UGC 8091のような矮小銀河が、初期宇宙の再電離過程でどのような役割を果たしたのかを解明することです。
また、低金属量銀河における星形成の結果を調査することも重要な研究課題となっています。

金属量とは、水素とヘリウムよりも重い元素の割合を示す指標です。
これらの重元素は恒星の核融合によって生成されるため、宇宙初期の第一世代の星々は必然的に低い金属量を持っていました。
矮小銀河に含まれる低金属量の星々を研究することで、古代の銀河から現代の銀河への進化の過程を理解する手がかりが得られると期待されています。

一見小さく歪な形をしているように見える矮小不規則銀河ですが、私たちの宇宙の歴史を紐解く上で、極めて重要な情報を秘めているのです。


参考文献

星空案内人
宇宙の壮大な美しさを、背景の科学の面白さとともに誰もが理解できる言葉で伝えることを目指す科学ライター
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