「M-1」の時期に振り返りたくなる宇宙の「M1」の物語

今年も年末恒例のお笑いの祭典「M-1グランプリ」の季節がやってきました。
実は、天文学の世界にも「M1」と呼ばれる存在があります。それが「かに星雲」です。今回は、この2つの「M1」にまつわる興味深い物語をご紹介します。

「M1」の由来 – 天文学の世界で最初の「M1」

ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された、かに星雲の画像. メシエカタログ1番目の天体としてM1とも呼ばれる.
Credit:NASAESA and Allison Loll/Jeff Hester (Arizona State University). Acknowledgement: Davide De Martin (ESA/Hubble)

かに星雲が「M1」と呼ばれる理由は、18世紀の天文学者シャルル・メシエにさかのぼります。
彼は1758年に、彗星の観測中にこの天体を発見しました。
メシエは当時、彗星を探す際に邪魔になる「動かない星雲状の天体」のカタログを作成し始め、このかに星雲を最初の天体として「M1」という番号を付けました。

約1000年前の大爆発ショー

かに星雲は、人類が記録した最も劇的な宇宙ショーの一つの名残です。
1054年7月4日、中国や日本の天文学者たちは、突如として昼でも見えるほどの明るい星の出現を記録しました。
これは超新星爆発という、星の最期の大爆発を目撃した記録でした。
この爆発は約3週間にわたって昼間でも見え、約2年間は夜空で観察することができたとされています。

かに星雲を形作った超新星爆発のアニメーション
Credit:ESA/Hubble

進化し続ける姿

ハッブル宇宙望遠鏡による最新の観測で、かに星雲の驚くべき詳細が明らかになっています。
現在、星雲は約6光年の広がりを持ち、爆発した星の残骸が複雑な糸状構造を形成しています。
中心には、1秒間に約30回も自転する中性子星が存在し、その強力な磁場によって加速された電子が特徴的な青い光を放っています。

画像で見られる色の違いは、爆発で放出された異なる元素を示しています。
青い部分は中性の酸素、緑は一回電離した硫黄、赤は二回電離した酸素です。
これらの元素は、私たちの体を構成する物質の起源でもあります。

M-1とM1 – 時代を超えた「一番」の物語

「M-1」が毎年新たな歴史を刻むように、宇宙の「M1」も今なお進化し続けています。
かに星雲は現在も1秒あたり約5ミリメートルの速度で膨張を続けており、その姿は刻々と変化しています。

ハッブル宇宙望遠鏡による観測は、6,500光年彼方にあるこの天体の驚くべき詳細を私たちに見せてくれます。
お笑い芸人たちが笑いで人々を魅了するように、かに星雲もその美しい姿で私たちを魅了し続けているのです。

M-1グランプリを鑑賞する際には、夜空に輝くもう一つの「M1」に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
両者はともに、時代を超えて人々を魅了し続ける存在なのです。


参考文献

星空案内人
宇宙の壮大な美しさを、背景の科学の面白さとともに誰もが理解できる言葉で伝えることを目指す科学ライター
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