プラネタリウム

プラネタリウム、100周年! ~100年前のプラネタリウム~

突然ですが、2023年~2025年は、プラネタリウム生誕100年にあたる年です。
ご存知でしたか?なぜ3年間も「100周年」なのか?そもそもプラネタリウムはどこでどうしてできたのか?
本記事はそんな【プラネタリウム誕生の秘密】に迫ります。

プラネタリウムのはじまり

近代プラネタリウムは今からちょうど100年前、ドイツのミュンヘンにある「ドイツ博物館」で初めてお披露目されました。「近代プラネタリウム」とは、球状のドーム中央に設置した投影機から星空を映し出す、現在多くの人が「プラネタリウム」と聞いて思い浮かべるタイプを指します。

この近代プラネタリウムが生まれるずっと前から、人々は星空を理解し、再現しようとしてきました。
例えば、古代ギリシャの沈没船から発見された「アンティキティラ島の機械」は、太陽、惑星、月の動きを再現するために、なんと紀元前1世紀ごろに制作されたと考えられています。

さらに18世紀にはオランダで、人々に正しい宇宙の知識を伝えることを目的に、「アイジンガー・プラネタリウム」という名前の惑星儀(オーラリー)が制作されました。これは初めて「プラネタリウム」と名付けられた施設です。

「プラネタリウム」とは、「惑星=planet」と、「何かを見る場所=arium」を掛け合わせた造語です。

プラネタリウムの誕生

ドイツ博物館の創設者であるオスカー・フォン・ミラー(Oskar von Miller)は、「偉大な芸術作品と同様に、自然科学の発展の歴史も人々に知ってもらい、後世に残すべきだ」と考えました。
特に天文学分野の「星空」と「太陽系の惑星」の説明のため、オスカー・フォン・ミラーは前例のない展示物を作りたかったのです。

1913年7月、オスカー・フォン・ミラーはドイツ・イエナのカール・ツァイス社にプラネタリウムの建設について相談しました。しかし、当初は装置の製作はツァイスの社の製造工程の枠とは異なるのではないかと考えられ、反対されてしまったのだそうです。

オスカー・フォン・ミラーはそれでも諦めませんでした。
3ヵ月後、オスカー・フォン・ミラーの熱狂的なオファーにより、ツァイス社は注文を受け入れました。
ツァイス社は2つの「プラネタリウム」を提案しました。

1つは、「コペルニクス式(地動説)」のプラネタリウム。
太陽の周りを地球に乗って移動し、惑星の軌道面を覗くことのできる体験型展示物です。

Credit: Deutsches Museum

近代プラネタリウム

しかしオスカー・フォン・ミラーは、この展示だけでは満足しませんでした。
そこで提案されたのが、もう1つの「プトレマイオス式(天動説)」プラネタリウム。人工的な星空を大きなドームに再現する、いわゆる「近代プラネタリウム」です。

Credit: Deutsches Museum

現在では、パソコンとプロジェクターを使えばどんな場所にも任意の映像を映し出すことができます。当
時の技術では球面に正確かつ美しく星空を再現することは、不可能に近いものでした。

しかしたくさんの困難を乗り越え、第一次世界大戦の影響も受けながら約10年もの年月をかけて初めての近代プラネタリウムツァイスI型が開発・製造されました。

1923年10月21日、ドイツ博物館の屋上に作られた仮設ドームで、近代プラネタリウムが関係者向けに初公開されました。

その後、6週間にわたって公開されたのち、12月末にプラネタリウム投影機はイエナにあるツァイス社の工場に持ち帰られます。更なる改良を重ね、1924年8月から10月まで工場の屋上で公開デモンストレーションが実施されました。

プラネタリウムはイエナやその周辺の市民にも広く公開され、大好評だったそうです。

そしてその後プラネタリウムはドイツ博物館のあるミュンヘンに運び込まれ、来たる1925年5月7日。ドイツ博物館のオープンに伴い、近代プラネタリウム第1号の稼働が本格的にスタートしました。

この日はオスカーフォンミュラーの70歳のお誕生日だったそうです。

この1923年10月21日の初の試験公開から、1925年5月7日のドイツ博物館開館までの一連の出来事にちなんで、国際プラネタリウム協会(IPS)は2023年から2025年までをプラネタリウム100周年にあたる年として記念事業を行っていくことに決定しました。 

Credit: Deutsches Museum

今からちょうど100年前、ドイツで生まれた近代プラネタリウム。

今では世界には約4000箇所、日本には約300箇所ものプラネタリウム施設があります。
プラネタリウム100周年にちなんで、日本でもたくさんのイベントが行われています。

日本プラネタリウム協議会(JPA)公認企画は、JPA100周年記念特設サイトから探すことができます。

https://100.planetarium.jp/?page_id=1046

ぜひチェックしてみてくださいね。

この記事はドイツ博物館にご協力いただき、掲載しています。
この場をお借りして深く御礼申し上げます。

参考文献:

Deutsches Museum – Jubiläum mit Stern
https://www.deutsches-museum.de/museum/presse/meldung/jubilaeum-mit-stern

日本プラネタリウム協議会(JPA)プラネタリウム100周年記念事業 ~地上の星 ドイツに生まれて1世紀~
https://100.planetarium.jp/

毛利勝廣, 2023, 天文月報, 116, 152 
https://www.asj.or.jp/jp/activities/geppou/item/116-4_152.pdf

井上 毅, 2023, 天文月報, 116, 154
https://www.asj.or.jp/jp/activities/geppou/item/116-4_154.pdf

名古屋市科学館 – 展示ガイド – アイジンガー・プラネタリウム
http://www.ncsm.city.nagoya.jp/cgi-bin/visit/exhibition_guide/exhibit.cgi?id=A530

国立天文台 – 暦計算室 – 貴重資料展示室 – アテネ国立考古学博物館所蔵 アンティキティラの機械 解説動画
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/exhibition/060/

井上 毅 著「星空をつくる機械 プラネタリウム100年史」2023, 角川学芸出版
→プラネタリウムの誕生・歴史についてもっと知りたい人へおすすめの書籍です!

名古屋大学大学院 博士後期課程2年
愛知県豊橋市出身。大学院で近傍銀河に関する研究に携わる傍ら、天文教育普及活動を精力的に行う。2024年にはドイツにて半年間の「プラネタリウム留学」を実現したプラネタリウムマニア。
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