ハッブル宇宙望遠鏡が、壮大な宇宙空間で繰り広げられる星の誕生ドラマの決定的瞬間を捉えました。若い星から放出される強力なジェットが、輝く星雲のガスと塵を切り裂きながら宇宙空間へと噴出する様子が、鮮明な画像として記録されています。
驚くべき若さのFSタウ星系
FSタウ星系は、画像中央付近に輝くFSタウAと、右端で暗い塵の帯に部分的に隠されたFSタウB(Haro 6-5B)から構成される複雑な多重星系です。
この天体系の年齢はわずか280万歳。
太陽が46億歳であることを考えると、宇宙の時間スケールでは生まれたばかりの赤ちゃんと言えます。
この若い星々は、星形成領域特有の柔らかく輝くガスと塵に優しく包まれています。
原始星FSタウBの神秘的な姿
FSタウBは、まさに誕生段階にある原始星です。
この天体を取り巻くのは、平たい形をした原始惑星系円盤で、星の形成過程で残された塵とガスで構成されています。
これらの物質は、将来的に惑星へと成長する可能性を秘めています。
厚い塵の帯が、ほぼ真横から見える円盤の輝く表面を二分しているのが特徴的です。
FSタウBは現在、「Tタウリ型星」への進化過程にあると考えられています。
Tタウリ型星とは、まだ水素の核融合を開始していないものの、太陽のような主系列星へと進化しつつある若い変光星です。
形成過程で周囲のガス雲が重力収縮する際に放出される熱エネルギーと、近傍のガスや塵の降着によるエネルギーによって光っています。
印象的なジェット現象の観測
FSタウBから噴出する青く輝く非対称な双極ジェットは、若い星の特徴的な現象を見事に示しています。
このジェットの非対称な構造は、天体からの物質放出率の違いによって生じていると考えられています。
FSタウBはまた、ハービッグ・ハロー天体としても分類されています。
これは、若い星から放出された電離ガスが、近傍のガスや塵と高速で衝突することで生じる明るい星雲状の天体です。
この観測成果は、星の誕生から惑星系の形成に至る過程の理解を深める重要な手がかりとなります。
宇宙における物質の循環と、新しい天体の誕生という壮大なドラマの一端を、私たちに見せてくれているのです。
参考文献